かつかれーのメモ帳

実験ノートか勉強記録

Rancilio Silviaの改造 (PID温調+低圧プレインフュージョン機能)

概要

Rancilio Silviaというエスプレッソマシンは、その内部構造の単純さのため改造の余地が多くなっています。いろいろといじりながらエスプレッソ抽出を楽しみたい、ということで昨年購入し、まあまあ一区切りといったところまでいじったので記録を残しておきます。配管周りの改造・電子工作・Raspberry Pi関連と、内容が結構バラけるので、いくらか記事を書いてみてこのページに集約するのが良いかなと思いました。
v3という世代の機種がベースではありますが、後付け改造ばかりなので割とどれでも行けると思います。部分的にでも、どなたかの参考になれば幸いです。

改造の目的・改造内容の検討

美味しいエスプレッソを簡単に安定して抽出できるようにしたい、ということに尽きます。あとは技術的興味()
今回の改造の目的はすべて味の安定性の改善で、計器類の増設+Raspberry Piを用いた制御でこれを実現しています。
エスプレッソ抽出の仕組み(後で記事を書く) から考えると、

  1. 粉のパッキング(=抽出速度)
  2. 湯の温度
  3. パックに通す湯の量

が一定にできれば味は安定するはずなので、項目ごとに検討していきます。

1. 粉のパッキング(=抽出速度)
通常の手順だと、安定させるのが3項目の中で一番難しいです。30秒くらいでショットの抽出が終わるようにタンピング*1の力を加減して粉の密度をコントロールすると良いのですが、同じように押し固めたつもりでも抽出時間は10秒~35秒くらいの範囲でブレブレで、安定させるのは難しかったです。
私の場合、ダメだった回はパックの様子からしチャネリング*2がよく起こっていた印象でした。外周部で顕著だったため、バスケットに対してタンパーが若干小さかったのかもしれません。
しばらく押し方を試行錯誤しましたが抽出時間を安定させることが出来ず、結局プレインフュージョン機能の追加を決めました。プレインフュージョンとは、エスプレッソの抽出圧を通常の9気圧まで上げる前に低圧(2気圧くらい)でしばらく放置し、静水圧による均質なパッキングやパックの蒸らしを行うものです。ごく弱いタンピング+プレインフュージョンで粉のパッキングは随分安定した印象です。
粉のパッキングがいつも同じように行えるようになったのでショットの再現が取りやすく、グラインダーの挽き目(メッシュといいます)の調整もしやすくなりました。一旦プレインフュージョンの手順を決めてしまえば、あとはメッシュの細かさで抽出時間を追い込んでいけば良く、グッと楽になりました。

2. 湯の温度
これはデフォルトの状態でもある程度一定に保たれています*3。しかし、デフォルトの制御方法では温度の振動が大きく、数度以上のレベルで温めすぎ→冷えすぎを繰り返すようです。高精度な温度制御(誤差1度未満)のためには温度センサーをボイラーに取り付け、湯温を見ながらヒーターを直接PID制御する方法が有効で、Silvia PID modなどで検索すると多くの作例が見つかります。今回は、他の制御と合わせてこれもRaspberry Piに担わせることにしました。従来の方法と比べると設定温度の上げ下げが出来るのも良い点ですね。

3. パックに通す湯の量
抽出されるエスプレッソをショットグラスや計量カップなどで受ければ特に問題はないのですが、クレマが多く出ていると液面が分かりづらく、止めるタイミングを待ち構えるのもなんだか面倒です。せっかくなので、Raspberry PiにUSB接続した重量計をつかって抽出量をモニタし、勝手に抽出を止める機能をつけました。

完成形

(写真を貼る)

改造の詳細へのリンク

各記事はのんびり追加していきます。

*1:バスケットに入れたコーヒー粉を上から押して固めること

*2:パックの一部、特に押しの弱い外周部を貫通するような隙間が生じてしまい、お湯がそこに逃げてしまうこと

*3:サーモスタット(ある温度以上で抵抗値が急激に増大する素子)がヒーターと直列に入っており、設定温度以上ではヒーターの発熱が抑えられるようになっています